ハコオトコ

金子修

12:20
第25回 入選

キノコとニートの話です。 難しい話ですが、人間のアイデンティティは、【他者】との交流で初めて明確なものになると思います。一人きりで生活していると、とても不安定な存在で「実は自分は存在していないのでは?これは夢なのでは?」と感じてしまいます。記憶もしかりです。自分の記憶だけでは不確かで「幼い頃この学校で勉強していたのか?ここで暮らしていたのか?」と、疑問が湧きます。友人や家族の記憶を共有してようやく、自分の記憶が確かなものになります。(もちろん、日記や写真、映像が手助けにはなりますが) そのことを、「ハコオトコ」と「キノコ」という物語で表現しました。 ところで、 これは2009年~2010年に作っていたアニメーションです。当時の自分は、職もなくて将来も真っ暗で、、主人公のような荒んだ生活をしていました。半年間、部屋の中に閉じこもり、他人とは接触せず、作品に魂を奪われるような感覚で作っていたことをよく覚えています。「こりゃ、やばい、オレの頭にキノコが生えている」気づいたときに、作るのを途中でやめてしまいました。 それから3年。ふとした気まぐれで再編集し、ようやく完成にこぎつけました。当時は「この作品は、絶対完成することはない」と思っていましたが、時が解決するものなのですね。足りなかったのは、精神的な余裕と技術的な編集スキルでした。 自分としては完成しただけでラッキーです。一度ゴミ捨て場に投げた作品だったので。