INTO THE BLUE

DAC 中川 滋雄、森 健一、小野寺 和彦

2:05
その他

■作品データ

INTO THE BLUE 「イントゥ・ザ・ブルー」 1986年 1分44秒
「AVA’86 映像ソフト大賞」 受賞

■制作

「Digital Animation Creators」(DAC)

1984年結成、東北大学の自主制作CGアニメーションの制作グループです。

中川 滋雄 (SF研) プロデューサ および シナリオ担当
森 健一 (アニメ研) ソフトウエア担当
小野寺 和彦 (アニメ研) 撮影ハードウエア担当

関連資料:

■本作品について

本作品はアマチュアCGアニメーションの黎明期(1985年~1986年)に制作されました。時代的にインターネット普及以前だったために書籍情報しか記録がありませんでしたが、このたびおよそ40年の時を経て「CGアニメARCHIVES」に収録され、自主制作CGアニメーションの歴史の一部に加わることができました。関係者の皆様に感謝いたします。

■作品解説

ストーリー性のある映像に挑戦した作品です。単なるデモ映像ではなく、「ストーリーCGアニメーション」として、企業や大学ではなく個人レベルで自主制作した作品としては「国内初」となります。(他の知られている作品と比較しても、おそらく世界でも初)

前年の「PHASE I」が自作ソフトによるレイトレーシング+8ミリコマ撮りの技術デモ的な位置づけだったため、今度はストーリーのあるアニメを作ってやろう、とのメンバーの強い想いがありました。中川がシナリオ・絵コンテを担当しましたが、技術的・計算リソース的な制約があり、大幅なシナリオ変更とオブジェクト変更を余儀なくされました。

何回かのダメ出しの後で、最終的に「卓上モビールが見ている夢」というストーリーになりました。これは、中国の説話「胡蝶の夢」がモチーフです。夢の中の出来事を示唆するために、シーンチェンジにホワイトアウトを多用しています。ちなみにフェードイン/アウトは8ミリフィルムの編集過程で処理することは難しく、レンダリング段階でソフトウェア的に処理しています。

モビール飛行機は半透明に見えますが、銀色のボディの鏡面属性の反射によるものです。
演出にはレイトレーシング法の特徴を積極的に活用することを意識し、2機目の登場時のチラ見せや、最後のモビールの影へのズームインなどに、オブジェクトが投影する「影(shadow)」の表現を使っています。

当初は「Rouge Au Soir, Blanc Au Matin」(TPO)がBGMにつけられていましたが、ネット公開にあたり、新規オリジナル楽曲に差替えています。

音楽:いしいの音楽制作所

<こぼれ話>
古い映画のような雰囲気を出すために、タイトルおよびクレジットは紙素材を撮影しています。PPC原稿用紙にインスタントレタリングを転写してレイアウト素材を作りましたが、文字間隔の調整作業には、当時SF研で同人誌を作っていた中川の経験が役立ちました。素材を8ミリで撮影するとレトロな雰囲気が出て、今見てもなかなか良い感じに仕上がったと思います。

■画像データ

76sec x 12fps = 約900枚
CG計算の解像度は 320×200 で RGB各5bit (約3万2千色)。

■レンダリング計算

友人らの PC-9801F2 計5台 (5MHz動作のi8087浮動小数点コプロセッサつき※)
今回は友人らのPCをメンバー(森)のアパートの一室に集結させて昼夜レンダリングしました。期間は夏休み期間を含み、およそ約3週間かかっています。

ひたすら 5inchフロッピーディスク を交換していく作業は前回(PHASE I)と同様です。
レンダリング時間はi8087で加速しても、1フレーム1時間程度を要しています。

(※(株)アスキー様から評価用のi8087数個とMS-Cコンパイラを提供いただき、制作に使用しました。当時の関係者の方々に感謝します)

■ソフトウエア

レイトレーシング ソフトウエアを、N88-BASIC言語からMicrosoft C 言語 に全面的に書き換え、i8087も呼び出せるソースコードにしました。
テクスチャは引き続き関数記述で生成しています。
アニメーションのためのソフトウエアも引き続きC言語で自作しています。

​■撮影

富士通パソコン FM77AV (4096色同時表示)を友人から借り出し、パラレルI/F経由でPC-9801と接続して、レンダリング画像を4096色で1枚ずつ表示させました。(I/Fカード、通信処理は中川が作成)
前年同様にモニタ画面を 8mmフィルムカメラ「ZC1000」で昼夜コマ撮り撮影しています。
当時はフロッピーディスクが高価だったため、全ての画像を保存するための枚数は一度に用意できず、撮影を2度に分けてフロッピーディスクを再利用した記憶があります。